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第四十九章「スノとスゼ」【3】

「もしかしたら、徒労に終わるかもしれないな…」

サッテリはそんな言葉を一人つぶやきました。

いくら自分の父親が頼んだ所で許可は下りないだろう、
そんな風に考えるよう
になりました。

次の条件として、兵士の隠れる場所が多い方がいいというもので
す。

街中で行われる処刑には、当然野次馬が多く集まってきます。

そんな所へ、必要以上の兵士を配置
するのは、いくら警備のためとはいえ、重
苦しく映ります。

政府は何を怖がっているのか、といい物笑
いの種になってしまうのです。

「族は隠れられず、兵士は隠れる、そんな都合のよい場所が
あるものか。

政府は現場の苦労を知らなさすぎる。」

またもサッテリは愚痴を呟きました。

それに、隠れるなら建物の陰より野次馬の中に潜んだ方がよさそ
うに思われま
した。

枝を隠すなら森、という訳です。


「いや、どうせ良いではないか。

どうせこの街で処刑が行われる事など無いのだから。」


そうやって自身に言い聞かせたサッテリは、適当な広場を見繕い、帰宅の途に
就くのでした。




その頃、静かな森の中にあるサッテリ邸のウィレオの元には、特殊遊撃隊の少
年兵二人が訪れていまし
た。

これは定例の行動であり、特殊遊撃隊に援助をしている彼女へお礼の挨拶に来
ているのです。

日、順番が巡ってきたのは、リアンとインザでした。

いつものようにウィレオの前に跪き、二人は交互
に感謝の口上を述べました。

ところが、ウィレオは物憂げな表情のまま、口を閉ざしていました。


「いかがなされました、ウィレオ様?」


リアンの問いかけに、ウィレオは沈んだ瞳を少し上げました。


「リアン、あなたはこの数日というもの、
ラスゼン様の為に奔走していましたね?」

「はい、その通りです。

ですが副隊長から命ぜられれば、従うのは当たり前です。

なぜに、そのような事を?」

「ユスデノ様とラスゼン様の間に何が起きているか、
聞かされていはいないのですね?」


ラスゼンからは“いつか話す”と言われているものの、未だに教えてもらえま
せん。

それにしても、寝
耳に水です。

確かにリアンはラスゼンに頼まれ、スロンゼルの件で色々と調べを重ねていま
した。


「でもそれが、隊長と副隊長の間に関係しているとは、
思ってもみませんでした。」


いいえ、心当たりが無い訳ではありませんでした。


「インザは、何か知っていますか?」


口をつぐむインザですが、知らないはずはありませんでした。

リアンが正直に告白しました。

裁判の前
日、ユスデノとラスゼンが斬り合うのではと、リアンはインザとソマ
に協力を仰ぎ、二人の間に割って
入ったのです。

「でも、理由は知りません。

いつもの喧嘩が、熱くなりすぎただけなのだと思っていました。」


インザも、否定はしませんでした。


「教えて良いものかどうか、とても迷いました。

あなたたちの、隊長に対する信頼が揺らいでしまうかも
しれないから。

でも、あなたたちは、特殊遊撃隊は一つの家族のようだと
私は思っています。

だから、知る権利があると考えました。

一つずつ、ゆっくり話しますから、慌てずにじっくりと
考えながら聞いてください。

いいですね?」


リアンとインザはウィレオに釘付けとなりました。

いつもなら慈愛に満ちた笑顔を、十三歳ながらまる
で姉のように母のように少
年兵たちへ向けているウィレオが、今だけはひどく冷淡に思われました。

れはおそらく、この話があくまでもユスデノとスロンゼルのものであり、自
らは傍観者にすぎないと自
覚しているからでしょう。

感情を露わにした話し方をしても、リアンとインザには浸透していかないと

断したからかもしれません。

これは長くなりそうだと、フーバがお茶を用意してくれました。

その
間、ウィレオたちはとても静かでした。

それから、ウィレオはたっぷりと時間をかけて話し、彼らが理
解できるように
努めました。

当のリアンとインザも、彼女の話を淡々と聞き入れるしかありませんでし
た。

信じられたかどうかは別として、事実は彼らの胸の奥へ刷り込まれたのです。

ウィレオの話が終
わった所で、感想を求められる訳でもなく、また浮かんでく
るはずもありませんでした。

「リアン、インザ、お疲れさまでした。

隊へ戻っていいわよ。

その話をどうするのか、自分たちでよく考えてちょうだい。」


フーバに見送られ、リアンとインザはとぼとぼとサッテリ邸を後にしました。

二人とも、一旦は乗って
きた馬の前を通り過ぎてしまうほど呆然としていまし
た。

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