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第四十七章「シノンの絆」【8】

「レシモス…ありがとう…」

マスグは、レシモスの頭にぽんと手を置きました。

「よくぞ言ってくれた、レシモス。

偉いぞ、大人になったな。」


マスグの絶賛にレシモスは、へへ、とはにかみました。

「ま…俺だって同じことを考えてたけどな。」

慌ててヤッヴが付け足しました。

それから、ウィレオが付け足しました。

「詳しい事情は分からないけれど、何も心配しなくていいわ。

シノンのお姉さんの頼みごとを、ユスデノ隊長が断れる訳ないもの。

ね、そうでしょ?」


そう言ってウィレオは、片目をつぶってみせました。

確かにシノンは、“偉大なるアーロイ”市での事件において、ユスデノの恩人
の一人です。

むげにするのは、ウィレオが黙っていないでしょう。

「ラスゼンに…やらせよう…」


ユスデノは声を絞り出しました。

何とも言えない、複雑な表情です。

「ありがとう、ユスデノ様。

スロンゼルさんの事、よろしくお願いします。」


マレアは何度もお礼を述べました。




それからマレアは急いで出発の準備を整えるため、宿に戻る事にしました。

その時ウィレオは宿の場所を尋ね、後で落ち合いましょうと約束をしました。

四人は宿へ戻り、マレアとマスグは自分の荷物をまとめました。

気がかりなのは、宿にヤッヴとレシモスの子供二人だけで残るという事です。

マスグは宿の主人に差し支えのない程度に事情を話し、一旦今日までの宿代を
払いました。

最初は七人で宿泊の予定だったのが、初日から三人が減り、次いで二人も先に
出発するというのです。

宿の主人がいぶかしく思うのも無理はありません。

ですのでマスグが宿代とは別にお金を渡し、ようやく納得してもらいました。

それからヤッヴとレシモスには、スロンゼルの件が何日かかるか分からないの
で、十分過ぎるほどのお金を預けました。

無駄遣いは絶対にするな、とマスグは何度も念を押しました。

もしも問題が長引いて、これでも足りなくなったら、宿を引き払って野宿し
ろ、とも付け加えました。

そして粗方マレアたちの準備が終わった頃、ウィレオが馬車に乗って宿を訪れ
ました。

態度がころっと変わって大層恐縮したのは宿の主人で、腰を低くしながら
“サッテリ様の奥方様がいらっしゃいました”と告げに来たのです。

「向こうでシノンに会ったら、これを渡してほしいの。」

ウィレオは、マレアに封筒を二通手渡しました。

「もう一つはワイミーという女の子に宛てたものよ。

シノンと大の仲良しの子だから、渡してもらえば分かると思うわ。」


マレアは受け取った手紙を、丁寧に鞄の中へ入れました。

「ウィレオ様…」

「ウィレオでいいわ。

シノンもそう呼んでくれているから。」


ウィレオはヤッヴとレシモスの事も気にかけておくと約束してくれました。

「ウィレオ、何から何までありがとう。

あなたが教えてくれなかったら、私はのん気に“偉大なるアーロイ”市を
通り抜けている所だったわ。」

「お礼なんていいのよ、私もシノンからたくさんの大切なものを
もらったんだから。

無事にお母さんと会える事を祈ってるわ。

お元気で。

シノンにもよろしく伝えて。」


本当なら、自分もシノンに会いたいと願うウィレオでしたが、そこまでの勝手
は許されません。

今はマレアに託した手紙に思いを乗せるだけです。

ヤッヴとレシモスに見送られたマレアとマスグは街を出て、少し東へ進んだ所
で北へ折れました。

やがて雑草の茂るなだらかな丘を上って下ると、そこに一軒の小屋がありまし
た。

わきには馬が二頭つながれており、人のいる気配がうかがえました。

マスグは小屋の扉を叩きました。

中から彼らを出迎えたのは、ロリョートとセッツァでした。




ロリョートはやや安どした表情です。

「脅かすなよ、旦那。

誰かと思ったじゃねえか。」

「当たり前の訪ね方をしただけだが?

お前らこそ、油断するんじゃない。

誰が通りかかるかも分からんのだから。」

リグ・テーテに近寄って、また特殊遊撃隊と鉢合わせになっては厄介なので、
ここに潜伏しているのです。

雨風の中で寝る事もいとわない彼らにとって、この小屋を見つけた事はかなり
の贅沢です。

ただ、そうとばかりは言えないのではないかと思うマレアです。

ロリョートとセッツァが、この狭い小屋に二人きりでいる事に耐え切れるかど
うか、それがとても心配なのです。

マレアとマスグを中央の椅子に座らせると、ロリョートとセッツァは定位置と
も言うべき場所に収まりました。

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