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第三十一章「本城会議」【5】

街の名を聞いてもすぐにはぴんときませんでしたが、早馬というのであればよほど重要な伝令がもたらされたという事でしょう。
「ネーリタムのヒダラム王子がお亡くなりになられたようなのです。」
「ああ、なるほど。
ネーリタム市はヒダラム王子がお住まいの街ですね。
ようやく思い出しましたよ。」
「いいえ、問題なのは、そっちではなくて…」
「はて、何でしたでしょう?」
「亡くなられたのです、ヒダラム王子が!」

開いた口が塞がりませんでした。
「それが本当なら、私の頭では整理がつきません。」
「それはヘリューナ様だけではございません。
本城は朝から上へ下への大騒ぎになっているのです。」
「死因は…まさか?」
「そのまさかでございます。三人の王子たちと同じ症状でございます。」

ヘリューナは血の気が引く思いでした。
四人目の犠牲者です。
しかも、三人の王子とはずっと離れた土地に住んでいるヒダラムの死は、せっかく収まりかけた混乱が再び巻き起こってしまうに違いありません。
「お待ちなさい、ヒダラム王子は第五位ですよ。
第四位のハシャルフ王子はどうなのですか?
まさか彼まで、という事はありませんよね?!」

弟子の顔色は青いまま変わらず、一瞬ヘリューナから目をそらします。
「今のところ、生きておられるはずだという事なのですが…」
「何なのですか、“今のところ”だの“はず”だのと、曖昧な言い方ばかり!
ハシャルフの安否は?!」

やつれたヘリューナの鬼気迫る形相に迫られ、弟子は今にも泣きそうです。
「はい、でも、実は、その…行方不明なのです。」
「ゆ、行方不明…?」
「突然に姿をくらましてしまわれたようなのです。」
「どういう事なのよ、どいつもこいつも…」

彼女の足から力が抜けていきます。
弟子の肩に掴まっても、ずるずると崩れ落ちてしまいました。
「ヘリューナ様?!」
それはヒダラムの訃報よりも、はるかに衝撃を与えました。
行方をくらましたとは、どういう事なのか。
その言葉通り、ハシャルフが自らの意思でいなくなったとしたら、今の状況でそんな事をしたのだとしたら、混乱は計り知れないものとなってしまうでしょう。
前途が闇に覆い尽くされたヘリューナの目の前は、霧がかかったように霞んでしまいます。
「大丈夫でございますか、ヘリューナ様?!」

かろうじて意識はあります。
徹夜明けの体には過酷な報告でした。
弟子に支えられて一階まで下りて行き、近くにあった椅子に腰かけます。
何からどう考えればよいのか、彼女の頭はまだ整理がつきません。
「ネクトパス王子は無事なのですか?
まさか、彼まで…」

それに関して、弟子は首を横に振りました。
「わかりません。
ミュトルン家からは何の連絡もないそうでして。
無事だから連絡をよこさないという事も言えますけど、今はそんな場合ではないですよね。
ですから事実確認のため、本城からお役人が今朝出発したそうです。」
「遅すぎるわ。
何かあったら、どうする気なのかしら…」

そしてまた考え込むヘリューナは、ハシャルフがいなくなった事が自分にもたらす問題に、再びめまいを起こしそうでした。
あの会議での報告が嘘ではないかと、疑われてしまうかもしれません。
疑われるだけならまだしも、嘘だとばれてしまったら、それこそ大問題です。
もしもハシャルフが容疑者となってしまうと、ヘリューナにまでその火の粉が降りかかってくるのです。
いいえ、もう降りかかってしまったようです。
それからほどなく、サリオストレア呪術院に政府の役人三人がやって来ました。
ヘリューナを訪ねてきた彼らは、次のように言いました。
「モギレレ様が聞きたい事があるというので、今すぐ本城までご足労願いたいのです。」
「今すぐ、ですか?」
「そうです。
ヒダラム王子の話は伺っておりましょうな?
事は急を要します。
ぜひ我々の馬車でご同行願いたい。」

モギレレの要件は大体察しがつくので、ヘリューナは行きたくありませんでした。
でも、断る理由が見つかりません。
すぐに支度をし、彼女は役人たちと一緒に、ディマルザ・ワイゼイへと向かいました。

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