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第七章「古森騒動」【3】

「おお、そうかね。犬は元々賢いんだが、その中でも長は頭抜けて賢いという話を聞いたことがあるからなぁ。」
「ヒャトンさんは僕の話を信じてくれるの?」
「もちろんさ。長は他の犬とは違う。何か特別な力を持っている、私はそう思うね。」

ヒャトンさんはそういってウインクしました。長のことを褒められたのが、キオは自分のことのようにうれしく思いました。
「ヒャトンさん、野犬たちが軍隊に殺されちゃうって、本当なの?」
ヒャトンじいさんは驚きました。
「誰からそんな話を聞いたんだね?」
「お兄ちゃんから…」

キオはルドから聞いた話をそのまま彼に話しました。
「ふうむ、なるほど。それはあっても不思議じゃない話だな。しかし軍隊が簡単に動くということも無いだろうて。何か動きがあったらディスマン様のところにも情報が入るだろうし。」

ヒャトンじいさんの話を聞いて、キオは少しだけ安心しました。でも、それは完全に否定された言葉ではありません。ルイルとパティンは黙ってキオの様子を見ていました。どうして彼がこんなに野犬のことを気にかけるのか、それが二人にはよくわかりませんでした。ヒャトンじいさんの部屋を出て、セーロとツォノに別れを告げて、彼らはディスマン氏の邸宅を後にしました。帰りの道すがら、ルイルはこんな事を言いました。
「明日から古森に行って野犬を探そうぜ、キオ。」

キオはえっという顔をしてルイルを見ました。
「昨日の白い犬のことが心配なんだろ?だったら探してみればいいじゃないか。」

会いたいと思うだけでは何も始まらない、探すという行動を起こさなければ。キオは自分のすべき事がはっきりとわかって、目の前が明るくなったような気がしました。
「当然パティンも手伝うよな?」
どうしてわざわざ野犬を探しに何て行かなくちゃならないのか、野犬はやっぱり自分たちを食べてしまうんじゃないか、そんな考えがパティンの頭の中を駆け巡りました。でも、今は友の心配を取り除いてあげる時なのです。
「い、いいよ…ちょっと怖いけど。」
「よし、決まりだ!明日から捜索活動開始だ。」
「あ、でもちょっと待って…シノンの農園の仕事がまだ残ってるんだけど。」

せっかく気分が盛り上がったところに水を差され、ルイルはうんざりした表情でパティンをにらみました。
「ああ、ああ、そうだな。うんうん、パティンの言う通りだよ。まずシノンの農園の仕事を終わらせて、それから長を探しに行こうぜ。」

         

翌日から彼らは大忙しでした。日の出と共に目を覚まし、子供三人だけですが、シノンの農園で作業をしました。彼らには別の大事な目的があり、そのためにもこの農園での作業を一日でも早く終わらせる必要がありました。ですから、彼らは学校に行くまでの間、大人顔負けの働きをしました。ありがたいことに、彼らが学校に行っている間、隣の農園からノークさんが手伝いに来てくれました。彼はディスマン氏に頼まれてやってきたのです。でも彼はもともとデムを手伝おうと思っていたので、喜んで引き受けてくれました。
「前に俺から助けてやると言ったんだが断られちまってね。よそ様に助けてもらわなくってもちゃんとやっていけるとさ。そうは言われたが、その後も何かと気にはかけていたんだ。だが間が悪いことに、ミロアが倒れた時には俺もコリー村に行ってしまってたんだよなぁ。何もしてやれなくて残念だったよ。ただ今回はディスマン氏じきじきのご依頼があったんだ。それならデムにも文句はあるまい。」
そう言ってノークはこの後、デムが帰ってくるまでの間の作業等々、全てを彼が責任を持って執り行うということになりました。キオたちも学校が終わってからノークを手伝い、その二日後には冬を迎える前の作業がとうとう終わりました。そして翌日、キオたちはさらに早起きをして古森へ向かいました。そのことを聞いて一番驚いたのはキオの母・シアです。始め彼女は自分の息子が言ったことを真に受けることができませんでした。キオが古森へ行くことをようやく理解できた時、実はうれしくて笑ってしまいそうでした。でも彼の真剣なまなざしを見て、笑ってはいけないと必死にこらえたのです。
「まさかあの子が自分から古森に行くと言うなんて…」
後にシアはゴルに対してそう話しました。ゴルが白森の丘へキオを連れて行ったことは間違っていなかったということです。

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