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第七章「古森騒動」【4】

キオはきっと強い子になれるはず、そう予感するシアでした。そして古森に着いたキオたちは、早速野犬たちを探し始めました。ところが、探すといっても実際どうやって探したらいいのかわかりません。何か良い考えが無いか三人は思案しました。始めに口を開いたのはルイルです。
「犬って賢いんだろ。だったら呼んだらその辺から出てくるんじゃないか?」
「呼ぶって、どうやって呼ぶの?」
「そりゃ当然“野犬やーい”とか“おーい、野犬”しかないだろ。」

パティンは鼻で笑いました。
「それはちょっとおかしいんじゃない?野犬はきっと“野犬”と呼ばれてるなんて知らないはずだよ。」
「パティンはいつもあれはだめこれもだめって言うだけだな。たまには自分でいい案を出してみろよ。」
「いい案っていっても、“おーい”とか“やーい”とか…」
「それじゃあ俺の言ったままじゃんか!大したことも言えないのに口を挟むなよ。」

パティンはちょっとむくれました。見かねたキオがこう言いました。
「ねえ、けんかしながらじゃ見つかるものも見つからないよ。“野犬やーい”でも“おーい”でもいいから、とにかく大声で呼ぼうよ。そうしたらひょっとして出てきてくれるかもしれないよ。」
「あの…出てきたらどうすればいいの?」
パティンの素朴な質問は、キオをぴたっと凍りつかせました。そこまでは考えていなかったのです。キオはただ長に会いたい、それだけだったのです。
「と、とにかく見つけたら僕に知らせて!」

それから彼らは大声で野犬を呼びながら森の中を歩き回りました。それでも一向に野犬の姿を見つけることができません。そのうちに辺りが少し暗くなってきました。
「もう帰ろうよ。そろそろ夜になっちゃうよ。」
「パティンとルイルは先に帰っていいよ。僕はもうちょっとだけ探してから帰るから。」
「え…!だめだよ、いっしょに帰ろうよ。真っ暗になったら帰れなくなっちゃうよ。」
「その前には帰るから大丈夫だよ。」
「今日のところはあきらめて帰ろうぜ、キオ。」
「でも…」
「暗くなったらまた長が出てきてくれると思ってるの?」

パティンの指摘にキオはどきっとしました。
「やっぱり、明るいうちは出てきてくれないと思うんだ。だから少しでも暗くなったら出てきてくれるような気がするんだよ。」
これにはルイルがあきれました。
「本当にそんなこと考えてるのか?出て来るかどうかわからないのに。もし出てこなかったらどうする気なんだよ?!ここに泊まるのか?松明だって無いんだぞ!」

結局二人に説得される形で、キオもいっしょに帰りました。キオは心の中では、真っ暗になったら必ず出てきてくれるはずだと信じていました。今度からは念のために松明を持ってこようと思いました。とにかく見つかるまで探そうと決意するキオでした。それから毎日、彼らは古森で野犬を探し続けました。学校が休みの日などは一日中森の中にいました。それでも、野犬の姿どころか、鳴き声すらも聞こえてこないのです。パティンとルイルは既にあきらめかけていました。
「こんなに探しているのに見つからないなんて、どうなってるんだ?」
「ひょっとしたら古森にはいないのかもしれないね。例えば、別の森に引っ越したとか…」
「犬が引っ越すなんて話、聞いたこと無いぜ。」
「例えばなんだから怒らないでよ。」
「じゃあ、他にも例えばって話しあるんだろ?言ってみろよ。」
「そんなに急には出てこないけど…人が怖いとか。」
「犬は人間を怖がったりしないよ。」
パティンの推測にキオが反論しました。
「でも、軍隊が来たら野犬はみんな殺されちゃうんでしょ?犬は賢いんだから自分たちに危害を加える人間がいることも知ってるはずだよ。だから怖いって思ってるかもしれないよ。」
「そんな…」

森を見渡しても、動物の気配すら感じられません。
「でもさ、もし引っ越したんならいいんじゃないか?それで軍隊に殺されることもなくなったわけだし。なあ、キオ?」
確かにルイルの言うとおりです。でも、キオには長がいなくなったなんて信じられませんでした。いえ、信じたくありませんでした。

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