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第五章「嘆きの朝」【18】

セッツァは袋の中を覗き込みました。
「おい、こりゃ違うぞ。」

セッツァは袋の口を大きく広げ、ロリョートにも見えるようにしました。中にいたのはマレアで、しかも金髪でした。
「こいつは赤毛の女といっしょにいた娘だ。おい、赤毛の女はどこにいる?」
ロリョートも驚いていました。
「これはどういうことだ?何でこんな娘を連れてきたんだ。話が違うぞ。」
「俺はあんたたちの話に乗った覚えはない。」

チメメが怒り出しました。
「兄貴、こいつはとんでもない野郎ですよ。俺達をだましやがったんだ。こんな奴許しちゃおけねぇ、殺しちまいましょうや!」

ロリョートは黙って剣を抜きました。ロリョートの眉間にしわが寄っています。
「あんたを信じた俺達が悪かったんだろうが、それでも腹の虫がおさまらん。残念だが、その娘ともどもここで死んでもらおう。」
「待て、あんたたちのために連れてきたわけじゃあないが、この子こそ本当の赤毛の娘なんだ。」
「嘘をつくな、どう見たってその髪は赤くないぞ。この期に及んでそんな話が通用すると思うなよ。」
「嘘じゃないんだ、髪は染めているだけなんだ。遊牧民たちを欺くためにもう一人の娘の髪を赤くして、私はこの子を連れて逃げてきたんだ。」

チメメの興奮は鎮まりません。
「このやろう、どれだけ嘘を並べ立てりゃあ気が済むんだ?!兄貴、もういいでしょう。さっさと殺しちゃってくださいよ。」
「待てチメメ。…おいあんた、今の話だけじゃ確かに信用できん。何か他に証拠はあるか?」

スロンゼルは自分の袋の中からガラスの瓶を取り出しました。
「これを見てくれ。金色の液体が入っているだろ?これでこの子の髪を染めたんだ。それに日がたてばまた赤い髪が生えてくるから、それまで待ってくれ。」

セッツァも剣を抜きました。
「ロリョート、時間稼ぎかもしれん。」
「で、ではせめてこの子が目を覚ますまで待ってくれ。この子の目を見てくれればわかるはずだ。昔話の通りにこの子の目は真っ赤なんだ。それなら俺の話しを信じられるだろう?」

ロリョートはしばらく考え込みました。
「娘はいつ起きるんだ?」
「今日の夕方か、夜までには目を覚ますはずだ。」
「ロリョート、起きるまで待ってる必要なんか無い。今すぐ娘の目を開かせりゃいいんだ。」
「乱暴な真似はよしてくれ。赤毛の娘だからってだけじゃない、俺にとってはとても大切な子なんだ。」

セッツァはスロンゼルの言葉を無視して、マレアに手を伸ばしました。スロンゼルは震えながら自分の剣の柄に手をかけ、恐る恐る鞘から刀身を抜きました。セッツァはそれを見て鼻で笑い、先にスロンゼルを殺そうとしました。
「よせ、セッツァ。やたらと殺すもんじゃない。」
セッツァは舌打ちをしました。
「さっきはお前もこいつを殺そうとしてたじゃねぇか。」
「話が変わったんだ。夕方まで待つことにする。しかし、もしあんたの言ったことが嘘だったら、あんたもその娘もその場で切るぞ。」
「わかっている。」

セッツァがロリョートに耳打ちをしました。
「ロリョート、生かしておくのは娘だけでいいんじゃないか?男は後から何かと邪魔をしてくるような気がする。」
「いや、あいつがいたほうが娘も言うことを聞くだろう。余計なことをしたら、そのときに殺せばいいんだ。」

そして、マレアの入った麻袋はセッツァの馬に乗せられました。スロンゼルが逃げ出さないようにするためでした。”手負いの熊”盗賊団は北へ向かって進路をとりました。ロリョートはスロンゼルにリグ・ラへ戻ると話しました。スロンゼルは黙ってついていくほかはありません。周りを盗賊団たちに囲まれ、逃げることはできません。それにマレアを残していくことはできないので、彼は逃げる気にもならないようでした。ただ、彼にはこの先のことがまったくわかりませんでした。スロンゼルとマレアがリグ・ラに行くことをヤスブたちは当然知りません。恐らく彼らには二度と会えないだろうとスロンゼルは思いました。遊牧民たちとの戦いから生き残り、バドに帰る仲間が仮にいたとしても、その彼らはスロンゼルとマレアがいないことをどう思うでしょうか。

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