第五章「嘆きの朝」【15】
その男の後ろから、さらに二人が進み出て、三人で並びました。
「これでどうだ、思い出しただろ?」
向かって左側にいる男が笑いながらそう言いました。そしてスロンゼルはようやく思い出しました。スロンゼルが彼らと出会ったのはリグ・ラです。酒場でトーレンとの会話を聞かれ、スロンゼルに儲け話を持ちかけてきたあの三人です。真ん中にいるのはロリョート、右にセッツァ、そして左のチメメです。チメメは続けました。
「ご覧の通り、俺たちは盗賊団を新たに結成させたんだ。その名も“手負いの熊”っていうんだ。どうだい、格好いいだろ?」
「それはリグ・ラでも聞いたよ。」
「おいチメメ、お前は黙ってろ。何度も言わせるな、お前はでしゃばり過ぎだ。」
ロリョートはチメメをにらみました。
「あんた達、まさか私らの後をつけてきたのか?」
スロンゼルの問いかけにロリョートはかぶりを振って答えました。
「いや、そうじゃない。俺がこの人数をかき集めている間にあんたたちは出発してしまったんだ。さすがに驚いたがそんなことであきらめるようなことはしない、俺はあんたたちが追われていることを思い出したんだ。フェリノアの軍隊があんた達を狙っている、そこから情報を集めたんだ。俺のすごい所はここからだ。たくさん集まった情報の中から関係あるものとそうでないものに振り分け、それらをうまく繋ぎ合わせたんだ。するとどうだい、赤毛の娘を連れたあんた達を追っているフェリノア軍ってのは今世間を騒がせている五百人の遊牧民、という結論に達したんだ。」
「大したものだ、盗賊にしておくのはもったいない。盗賊なんかやってないでもっと違った道に進んだほうがいいんじゃないか?例えば軍隊は?あそこはあんたのような頭の切れる奴を欲しがってるはずだ。」
「おい、ロリョートの兄貴を馬鹿にするなよ。兄貴は軍隊なんかにゃ興味がねぇ、兄貴は他人から金品を横取りするのが大好きなんだ。盗賊をするために生まれてきた男だぜ!」
「やいチメメ、チメメ、チメメ!!俺の唯一の失敗はお前を連れてきたことだ。これ以上何かしゃべってみろ、お前を殺してここにある死体といっしょに埋めてやるぞ。口をつぐめ、歯を見せるな!」
チメメは両手で自分の口を押さえました。
「まだ話は終わってない。俺たちは遊牧民を探した。すると意外にもあっさりと見つかったよ。よくよく考えてみれば五百人の大所帯だからな、いやでも目立つってもんだ。俺は遊牧民の後を追えば必ずあんたたちの元へいけると信じた。果たしてその通りになったじゃないか。あんたたちは奴らと一戦交えていた。だがあんたの姿が無い。今度は騎兵隊の様子を見に行った。すると馬車はあったが馬がつながれていない、まるで逃げた後のようだった。そして騎兵隊の中から一人が飛び出し馬で駆けていった。それが今ここに転がってる奴なんだが。俺はこれだ、と思ったね。そしてこいつの後を慎重に尾行してきたら、案の定あんたと再会できたというわけだ。完璧だと思うだろ、おい?」
ロリョートは満足げでした。大仕事をやってのけた高揚感に浸っているようでした。
「その袋の中に赤毛の娘がいるんだな?」
「ま、待て。この袋に手を出せばあんたたちもこの男のように頭を射抜かれるぞ。」
「その様子は俺たちも見てたよ。だから仲間に辺りを見張りに行かせてるところだ。」
仲間、と聞いてスロンゼルは愕然としました。このほかにまだ人数が集まっているとは思っていませんでした。
「俺だって伊達にリグ・ラに居座ってたわけじゃないんだぜ。時間をかけてもっと大勢の奴らに声をかけてたんだ。だからいざって時にこれだけの仲間が揃ったんだよ。」
ロリョートの仲間の一人が戻ってきました。
「お頭、そこらじゅう見て回りましたが誰もいませんでしたぜ。矢を撃った奴はどっかに行っちまったようです。」
「ご苦労、しかし念のためにもう少し見張りを続けておいてくれ。」
男は持ち場に戻っていきました。スロンゼルを助けてくれる味方はどこにもいないようでした。呆然とするスロンゼルを尻目に、セッツァは麻袋のほうへ移動し、袋の口を縛ってある紐を解きました。
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