第四章「誓いの夜」【25】
「イオニーネ、俺だよ、レゴノートンだ。」
イオニーネは扉を開けようとして手を伸ばしました。
「開けないでくれ、イオニーネ。そのままで聞いてほしいことがあるんだ。」
レゴにとっては不思議なことでした。イオニーネに会いに来たはずなのに、今は顔を見ることができなくなっていたのです。きっと今彼女の顔を見てしまうと、ここまで耐えていたものが全て崩れ落ちてしまいそうな、そんな気持ちになっていたのです。
「何かしら?マレアが眠っているからあまり大きな声は出さないでね。」
「わかってるさ、すぐ終わらせるよ。」
しばらくの沈黙が流た後、レゴが話し始めました。
「俺が初めてイオニーネに会ったのは、この旅に出発する前日だったよな。あの頃から俺たちは妙に息が合っているというか、いい関係だったと思わないか?」
「そうかもしれないわね。ケンカもよくしたけど。」
「ああ、でもそれだってお互いに思ってることを遠慮無しに言いあえたってことだ。俺たち、これからもこんな風にいられたらいいと思うだろ?」
「どうしたの、レゴ?あなたちょっと変よ。」
「…はっきり言うよ、俺と結婚してくれ。」
「………」
「イオニーネ、今日はいつもと違うんだ。こんな事を言うのはこれで最後だ。俺は本当に君と結婚していっしょに暮らしたいんだ。子供もたくさん作って賑やかに生活したいんだ。俺はイオニーネを一生大事にするよ。だから、結婚してくれ!」
「…こんな大変な時に、何言ってるのよ?!」
「こんな時だからこそさ。自分の気持ちをちゃんと君に伝えたかったんだ。無事にバドに帰ったら式を挙げよう、みんなにも祝福してもらおう!」
「無事に帰れるといいわね。」
「そんな他人事みたいな言い方はやめてくれ。絶対帰るんだと強く願うんだ。俺と君で笑の絶えない家庭を作るんだ、素晴らしいだろ?」
「仕方ないわね。いいわ、レゴ、もし二人とも無事に帰れたら結婚しましょう。」
「本当か?!よし、ノドモス!ノドモスも聞いていたよな?あんたが証人だぜ?!」
「ああ、聞いとったよ。おめでとう。」
「ありがとう、ノドモス!じゃあ俺はヤスブ様たちのところへ戻るよ。またな、イオニーネ。」
レゴはそういってあわてて走り去りました。辺りは静けさに包まれました。イオニーネもノドモスも何も言いませんでした。ノドモスは自分がイオニーネにしてあげられることは何もないと思っていました。彼女にかける言葉もわかりませんでした。レゴのプロポーズはイオニーネの希望にはなりませんでした。明日か明後日か、近いうちに彼女は”赤毛の娘”としてヤスブ一行の元から引き離されるに違いありません。やがて彼女は、恐らくフェリノアに連れて行かれるのでしょう。そうなれば彼女がフェリノアを出ることは永久にありません。赤毛の娘でないことがばれたとしても、そうでなくても。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 第八章「ノドモスのカケラ」【3】(2008.12.02)
- 第八章「ノドモスのカケラ」【2】(2008.11.26)
- 第八章「ノドモスのカケラ」【1】(2008.11.20)
- 第七章「古森騒動」【24】(2008.11.14)
- 第七章「古森騒動」【23】(2008.11.08)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/144927/16153743
この記事へのトラックバック一覧です: 第四章「誓いの夜」【25】:

コメント