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第四章「誓いの夜」【16】

「うむ、だが今そのことは考えるまい。皆でいっしょに帰るのだ。スロンゼル、もちろんお前もバドへ来てくれるな?」
「はい、私でよければ喜んで。」
「それを聞いて安心した。どれ、私はマレアたちを迎えに行くとしよう。」

そういって立ち上がろうとしたトーレンをスロンゼルが止めました。
「いいえトーレン様、そのような役目でしたら私にお任せください。」
「いいのだ、私は酒を少し飲みすぎた。酔い覚ましに歩いてくるよ。お前はここにいてゆっくりと飲んでいるがいい。」
トーレンは酒場を出て行き、スロンゼルは一人残りました。スロンゼルは先ほどの言葉を少し後悔していました。自分はこのままバドに行ってしまっていいものかと悩んでいました。彼自身の旅の目的は家族の消息を掴むことです。バドに行くことが最善のことなのか彼にはわかりませんでした。その時彼は自分への視線を感じました。隣のテーブルの男たちがスロンゼルを見ています。この男たちは先ほど馬の雨乞い様の昔話をしていた三人です。なぜ彼らが自分を見ているのか、スロンゼルには見当も付きません。スロンゼルは辺りをうかがいましたが、当然トーレンの姿はありません。彼らは席を立ち、スロンゼルの元へ近寄ってきました。金でもせびるつもりなのでしょうか?彼の額には脂汗が浮かんできました。

                

スロンゼルの体は固まってしまったかのように動きませんでした。三人組はスロンゼルがいるテーブルの席に座りました。
「おい、あんた。」
スロンゼルの真向かいに座っている、先ほどの昔話を大声で語っていた男が最初に口を開きました。スロンゼルは答えません、いや、答えられませんでした。彼はテーブルの中央部分を見つめたまま石のように動きませんでした。
「何だこいつ、俺たちのことを無視しようってのか?!」

スロンゼルの右隣の若い男がけんか腰で言いました。真向かいの男が彼を制しました。
「そのままでいいから聞いてくれ。俺の名はロリョート、隣の若いのがチメメ、もう一方にいるのがセッツァだ。俺たちは別にあんたをどうこうしようって言うんじゃない。その、黄金を生む娘の話が聞きたいんだ。」
スロンゼルはちらりと真向かいの男・ロリョートを見ました。
「私たちの話を盗み聞きしていたのか?」

スロンゼルは震える声で尋ねました。
「人聞きが悪いな、はじめはもちろん聞く気なんてなかったよ。でも自然に聞こえちまったんだ。何しろあんたら大きな声で話していたからなぁ。」
何という不用心さでしょう。自分だけならともかく、まさかトーレンまでもが酒に酔って大声を出してしまっていたとは驚きです。しかもそれを今彼らに指摘されるまで気づかずにいたのですから、まさに笑うに笑えない失態でした。
「全部聞いていたならもういいじゃないか。他に話すことなんて何もないよ。」
スロンゼルは少し落ち着いてきました。
「いやいや、聞きたいことは山ほどあるよ。あんた、その娘が黄金を生むところなんて見たことないんだろ?」
「そりゃそうさ、人が金を生むはずもないし、その話さえ今までまったく知らなかったんだからな。」
「だけどあんたらを追ってる連中はその娘を欲しがってる。そうだろ?」
スロンゼルはゆっくりと男たちを観察しました。彼らの服装は一般的なもので、リグ・バーグの町の人間がよく着ています。年の頃は、ロリョートが四十代後半で、セッツァが四十代前半、チメメが二十代後半といったところです。

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