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第四章「誓いの夜」【15】

狙われていたのはマレアだったのです。
「トーレン様、先ほどの昔話についてお聞きしたいことがございます。」
「何だ?言ってみろ。」
「赤毛と赤目の子供が黄金を生んだ、ということですが”生む”とはどういうことでございましょうか?」
「そこは私にもよくわからんのだ。具体的に語られたのを聞いたこともない。せいぜい子供の周りに自然と黄金が現れてくる、というぐらいだ。しかし、子供の両親はそのことを知らなかったようだから、それは無理があるな。」
「単に景気がよくなっただけということは考えられませんか?それでしたら偶然ということもありえるのではないでしょうか?」
言い終えたところで彼は後悔しました。トーレンたちはそのために命がけで旅をしているというのに。
「スロンゼル、お前の言うことももっともだ。バドの人間でさえ、あれは迷信で、そのために国費を使って遠いマセノアへ旅をするなどばかげているという者もいたよ。実際私もその一人だ。」
「トーレン様はやはりそのようにお考えでしたか。恐れながら、それではなぜトーレン様はこの旅に出られたのでしょうか?」
「始めは私もヤスブ様に出発を思いとどまらせようとした。だがそれは聞き入れられず、ヤスブ様が旅に出られることが決定した。それならば私はヤスブ様をお守りするために、旅に同行することを決めたのだ。すると、結果として赤毛と赤目の子供は存在した。本人を見るまで半信半疑だった私だが、マレアを初めて見たとき考えが変わり、そして確信したよ。この旅は無駄ではなかったとな。」
「マレアを見て、でございますか?しかしそれだけで昔話が実話だとは確信できないのではないでしょうか?」
トーレンはにやりとしました。
「昔話は迷信だと私は今でも思っているよ。余談だがマスグは信じているよ、心からな。だがここで必要なのは昔話どおりの姿をしたものがいたということだ。信じている人間にとってはそれが大きな励みとなる。今バドの民の士気はかなり落ちているのだ。皆働く気力を失くしてしまっているのだ。生きる目標を見出せないでいる。マレアが黄金を生もうが生むまいが、彼女の姿を見れば祖国の者たちの気力は大いに上がることだろう。」
「なるほど。」
スロンゼルは感心しました。トーレンはさらに語り続けました。
「だからこそ、マレアを必ず無事にバドへ送り届けなければならんのだ。それこそがバドの希望なのだ。」
「しかし今、私たちは追われているというわけですね。トーレン様、それはいったい誰なんですか?」
「今のところわかっているのはリグ・バーグ、そしてフェリノアだ。奴らは軍隊を使って我々からマレアを奪うつもりでいる。」
「それではリグ・バーグやフェリノアにもあの昔話が広まっているというわけですか?」
「少なからずどこの国にもあの昔話を知っている者がいると見て間違いないだろう。バドから他の国へ移り住んだ者もいるし、その逆もまた然りだ。だがまさか信じているとも思えん。奴らの真意がどこにあるかわからんが、マレアを狙っているのは疑いようがない。」
「確かに、フェリノアはもちろん、リグ・バーグも裕福な国でございますから、今さらいくばくかの黄金をほしがるとも思えません。」

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