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第二章「マレアとイオニーネ」【1】

白森の村を出たヤスブたち一行は、夕方になる前にラムラス村を通り抜けました。そしてそのまま暗くなるまで道なりに進んでいきました。夜になり、彼らは道を少し外れた野原に野営の準備をしました。女性2人のためのテントも張られています。食事の用意をしているのはイオニーネと、馬車を操ってきた初老の男性でした。馬車に揺られているうちに、沈んでいたマレアの心も少しだけ安らかになってきたようでした。そのうち彼女はイオニーネの手伝いを始めました。マレアにとってはその方が気持ちが落ち着くようなので、イオニーネは彼女に手伝ってもらう事にしました。旅の一行は全員で13人になりますので、食事の量もかなりのものになりました。忙しく働く中で、マレアは初老の男性がノドモスという名前である事を知りました。
「わしも十七年戦争の時は戦いに出ていたものさ。勇敢に戦ったよ。だが敵に脚をやられてね。そう、左足だ。歩くのさえも不自由になってしまった。だから今は馬車乗りになって、みんなの世話をしているというわけだ。あそこにいる連中は戦うしか能のないヤツばかりでね、わしがいないと肉を焼く事さえも満足にできないんだよ。」
そう言ってノドモスは陽気に笑っています。マレアにも笑顔が覗けます。その様子を遠くから眺めていたヤスブも少し安心しました。ヤスブにはこの旅における心配事が色々とありました。その中には、マレアが逃げ出してしまわないかという悩みもあります。それは、まだ彼女の家に近い今が一番危険なのです。マレアが心変わりをしないように気を配らなければなりません。そして白森の村から遠く離れてしまえば、彼女もきっとあきらめてくれるでしょう。だからヤスブは一歩でも早く、先へ先へと進みたいと思っていました。そんな事をあれこれ考えていると、イオニーネの声が響き渡りました。
「さあ、みなさん!お食事の用意ができましたよ、ヤスブ様もこちらへいらっしゃってくださいな!!」
見張りのものを3名ほど周囲に配置して、残りのものは夕食を食べ始めました。兵隊たちもようやく緊張から開放されたようにがやがやと話始めました。マレアも隅のほうでイオニーネやノドモスと一緒に食事をしています。考えてみれば、マレアはこんな風に知らない人たちばかりの所で食事をするのは初めてのことでした。ただ雰囲気は決して悪くなく、むしろみな楽しそうにも見えました。
「どうしたの、マレア?料理がお口に合わないかしら?」
あまり食の進んでいないマレアにイオニーネが問いかけました。
「あ、違います。料理はとても美味しいです。みんなが楽しそうだったから見ていたの。兵隊さんってもっと怖い人たちだと思っていたから…」
「こいつらは腐れ縁でね。つきあいが長いのさ。2人を除いては、戦争の時もずっといっしょに戦っておった。お互いに助け合いながら生き延びてきた、気心の知れた連中なのさ。だから、言ってみれば家族のようなもんだ。」
「それだけじゃないわ!彼らの話が弾んでいるのは、私の味付けのおかげでもあるのよ。そうでしょ、ノドモスさん?」

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