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第一章「初恋とカリスの実」【16】

「初めまして、マレア!私はイオニーネよ。あなたの身の回りの世話をするために、はるばるバドからやって来たのよ、よろしくね。大丈夫、あなたは何も心配しなくていいのよ。全て私やヤスブたちにまかせてちょうだい。長い旅になるけど楽しく行きましょう!」
マレアが馬車に乗り込み席に着くまでの間に、イオニーネは一気にまくし立てました。マレアは彼女を目を丸くさせてきょとんとした顔で見つめました。イオニーネは明るい笑顔をしていました。この時マレアは少しだけ暗い気持ちから開放されたような気になりました。でも出発の時は近づいていました。マレアは馬車の外に両親と妹の姿を見つけました。
「マレア、向こうの方にかわいがってもらえるようにしなさい。」
「体には気をつけてね。旅の無事を祈っているわ。」
「お姉ちゃん…。」
短い言葉でしたが、マレアには家族の思いが十分に伝わってきました。マレアはうなずくだけでした。そしていよいよヤスブが出発の合図を出しました。
「ディスマンさん、今回は本当にお世話になりました。ありがとう!」
数日前、この村にやってきたときのようにヤスブが先頭に立ち、馬を歩かせていきます。他の者も動き出しました。馬車もデムたちの前から少しずつ離れていきます。マレアが馬車の窓から顔を出し、家族に向かって叫びました。
「お父さん、ありがとう!お母さん、無理しないでね!シノン、みんなと仲良くね!」
それだけ言うと彼女は窓の扉を閉めました。シノンは馬車を追っかけていきます。キオたちも走り出しました。ヤスブたちの一向は村の大通りを進んでいきます。通りにも何人かの村人が並んでその様子を眺めていました。馬は次第にその速度を上げていきました。もう子供たちの脚では追いつけないほどの速さで兵隊たちは進んでいきます。やがて彼らは村の門を抜け、道の向こうに消えていきました。

              

日が暮れてきました。キオとルイル、パティン、シノンの4人はまだ家に帰らずにいます。彼らはヤスブたちを追って村の門の前まで来ました。そしてそのままそこにいたのです。あれからシノンはずっと泣いていました。たまに泣き止んではまた泣き出す、の繰り返しです。ミロアがシノンを探してやって来ました。
「シノン、もう帰りましょう。ここにいたってお姉ちゃんが帰ってくるわけじゃないのよ。みんな、シノンのそばにいてくれてありがとう。でももう晩御飯の時間よ。お家に帰った方がいいわ。さ、シノン立ちなさい。」
シノンは泣きながら母親といっしょに帰っていきました。後に残った少年たちも帰ろうとしました。キオがふと口を開きました。
「マレアはもうどこまで行ったんだろう、隣の村に着いたかな?」
「とっくに着いてるさ。馬に乗ってるんだから。」
ルイルの答えを聞き終わる前にキオはこう言いました。
「今日はそこに泊まるかな?」
「キオ、どうしたの?」
彼の様子がおかしいと感じたパティンが、キオの顔を覗き込みました。
「僕、マレアを連れ戻してくる…!」

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