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第一章「初恋とカリスの実」【13】

デム・サグはディスマン氏の館にいました。呼ばれた理由はわかっていました。マレアのことです。しかし彼はこの申し出を断るつもりでいます。どうにも腑に落ちない点があるのです。そもそもなぜバドなのか?あんなに遠くの国の人がどうしてわざわざこんな異国の片田舎に住む娘を養女にしたいと言っているのか、それがわからないのです。自分の家にやって来たヤスブの話によれば、そのバドの大金持ちの人は以前にマレアと会ったことがあるというのです。数年前、マレアがまだ8歳になるかならないかの頃でした。白森の村の隣の隣、メイベリエ町の市場に彼女は父親といっしょに来ていました。デムが用事を済ませている間、マレアは1人で遊んでいました。その時彼女は、道にうずくまり苦しそうな表情をした男性を見つけました。具合の悪そうな男性を、彼女はその小さな体で病院まで運んであげようとしました。もちろんそれは無理な話で、結局はそこを通りがかった別の人が助けてくれたのです。その助けてもらった男性というのが、例のバドの大富豪だというのです。デムはそんな事はまったく知りませんでした。でもマレアはその事を何となく覚えていました。その人はマレアの赤い髪の毛を覚えていました。そしてその人には子供がおらず、ぜひマレアを自分の養女にと、ずっと探していたそうです。それでもデムにはこの話は信じ難かったのです。デムはディスマン氏の書斎へ案内されました。中に入ると、ディスマン氏が1人で待っていました。ヤスブはいないようです。
「悪かったね、デム。いきなり呼び出してしまって。」
「い、いえ。そんな事ありません…。」
緊張してか、デムはディスマン氏にすすめられてもなかなかソファーにも座らずにいました。そしてようやくデムが腰を下ろし、2人の話が始まりました。
「話というのは他でもない、マレアの事なんだよ。ヤスブから大体の所は聞いていると思うがね。」

           

ディスマン氏の農場のサグ家の区画ではミロアが忙しそうに働いていました。今日ばかりはシノンも文句も言わずに黙々と収穫の手伝いをしています。加えて言えば、キオもルイルもパティンもそれぞれの家でおとなしく仕事をしていました。でもマレアは自分の家にいました。部屋に閉じこもっています。自分の将来がどうなるのか心配で、外に出ることもできずにいたのです。シノンは姉のことももちろん心配ですが今は母の方もきがかりです。何も言わずに働いていますが、顔色が悪いのです。もともとミロアは健康な方ではありませんでした。それはシノンを生んだ後ますます悪くなったようなのです。ここ数日は調子も良かったのですが、今朝の騒動でまた具合が悪くなってしまいました。薬を定期的に飲めれば問題ないのですが、サグ家にとってその薬はとても高価なものでした。マレアがバドの大富豪を助けたその日、デムはメイベリエ町の知人に、薬を買うためのお金を借りていたのでした。

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