第一章「初恋とカリスの実」【9】
「ここからが本題ですよ、村長。彼らはデムの所へ行ったのですよ。」ディスマン氏と村長の話はまだ続いていました。デムとはマレアの父、デム・サグのことです。村長はとまどいました。なぜ、剣を持った男たちが雇われ農夫のデムを訪ねたのか村長にはわかりませんでした。デム・サグは白森の村の隣、ラムラス村の出身です。ディスマン氏に雇われてこの地へ移り住みました。それからこの村の娘ミロアと結婚しました。彼の性格は少し意志の弱い部分もありますが、勤勉な男です。しかしまさか彼の過去に何かあったのでしょうか、村長は考えをめぐらせました。ディスマン氏が言葉を続けました。「デムについては心配ご無用です。それに物騒な話ではありません。彼らの本当の目的はデムの娘、マレアにあるのです。」「さっぱりわかりませんな!一体何の理由があってその兵隊たちはマレアに会いに来たのです?!」村長は少し混乱してしまったようです。思わず声が大きくなってしまいました。「落ち着いてください、村長。先ほども言いましたが物騒な話はこれっぽっちもないのですから。彼らはバドのとある大富豪に雇われて彼女に会いに来たのです。マレアを養女として迎え入れたいと申し入れるためです。」
キオたち4人はマレアの家の前でたたずんでいました。よく見れば窓から中の様子が伺えそうです。ただ少し高い位置にあるのでキオやルイル、シノンには背が届きません。パティンがルイルに促されて恐る恐る覗き込みます。パティンは中を見て驚きました。部屋の中には彼らがいたのです。昨日見たあの兵隊たちです。あの時は10人ほどでしたが、見る限りこの部屋の中には3人ほどいるだけでした。部屋の真ん中には丸いテーブルがあり、それを囲んでデム、ミロア、マレアが並んで座っていました。兵隊の中の1人もテーブルの前のイスに腰掛けています。昨日道を聞いてきた、あの無精ひげの人です。デムたちと何か話しています。あとの2人は彼らと少し離れて壁に寄りかかっていました。1人は眼を閉じ、もう1人はデムたちをじっと見ています。話の内容はパティンの所までは聞こえてきませんが、楽しい話題でないのは確かなようです。マレアは何も言わず黙って話を聞いていますが、とても困惑したような表情をしています。デムとミロアも驚いたような、とまどったような複雑な顔をしています。その時です、マレアはふっと窓に眼をやりました。パティンがあっと思った瞬間、彼女と眼が合ってしまいました。マレアは眼を丸くしてパティンを見ています。ところが壁に寄りかかっていた兵隊が彼女のその様子に気付き、彼もまた窓に視線を向けました。パティンはそのことには気付かず、まだマレアの方を見ています。途端にその兵隊は窓にツカツカと歩み寄りました。ようやくパティンもそれに気付き、窓からさっと離れました。兵隊は窓を開け放ち、外にいる子供たちを見つけました。
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