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第一章「初恋とカリスの実」【1】

白森の村は収穫の季節を迎えていました。村全体に広がる果物畑では村人が忙しそうに働いています。カリスの実の香りが村中を包んでいます。ここ白森の村は小国マセノアの南西に位置しています。カリスの実は白森の村の特産物です。手のひらに納まるほどの大きさで、白い皮に包まれた果肉は甘酸っぱい味を醸し出します。マセノア国内のみならずその周辺の国々にも出荷されています。ここ十数年、村の作物はみな豊作でした。カリスの実に限らず、チダの実、クラムの実なども大きな収穫量を上げました。この村に住む9歳の少年、キオ・マシュルも収穫の手伝いをしています。ただし、あまり作業に集中できていないようです。そわそわとあたりを見渡しています。どうやら誰かを探しているようです。キオの目の動きが止まりました。マシュル家の畑の奥、白森の入り口あたりに2つの人影が見えます。ルイル・フィスコとパティン・タラサの2人です。2人ともキオと同じ9歳の少年たちです。ルイルとパティンは家の収穫を抜け出してきていました。そしてキオもまたこの場を抜け出そうとしていました。近くに家族の姿はありません。みなそれぞれの受け持ちの場所で作業をしています。キオは自分を見ている者はいないようだと確信すると、その身をかがめてするするとその場から友人たちのいる所まで駆けていきました。
「急げ、キオ!」
ルイルが声をかけます。
「声が大きいよ、ルイル。」
驚いてパティンがルイルの腕をつかんでいます。キオが2人の元にやってきました。
「よし、行こう!!」
3人は村の中央へ走り出しました。目指すは白森の村で一番の大きな農場です。

                         

そこは村の有力者、ディスマン氏の所有するカリス畑です。広大なその土地は、知らない者が入り込むと必ず迷ってしまいます。しかしキオたち3人はその中に走りこんでいきました。キオが先頭を走っていきます。その後ろから3人の中で1番背の低いルイルが続き、1番背の高いパティンが最後にいます。彼らはこの農場へはもう何度も、いえ実はほぼ毎日のようにやって来ていたのでした。カリスの実が生る木々の間を抜け、農場の中央を突っ切り、その西側にある区画へとたどり着きました。もともとこの大きな農場でディスマン氏の家族だけが作業をしているわけではなく、ディスマン氏に雇われて農作業の手伝いをしている家族がいくつもありました。キオたちはその雇われの家族たちが担当している区画の1つへとやって来たのです。

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