第一章「初恋とカリスの実」【2】
息を切らした3人の視線の先には1人の少女の姿がありました。マレアです。彼女はサグ家の長女でキオよりも6つ年上の15歳です。マレアは働き者で可愛らしい普通の女の子でした。少し人より違うのは、彼女が赤い髪とさらに燃えるように赤い眼をしていることでした。白森の村の住人にもそんな髪や眼をした人はいませんし、マレアの両親も特に目立った髪や眼をしているわけではありません。かといって彼女がどこかから拾われてきた子というわけではなく、れっきとしたサグ家のデムとミロアの間に生まれた娘なのです。小さいころはその風貌のためにいじめられる事もありましたが、マレアはそれにもめげずに明るく育ってきたのでした。いつしか村の若い男たちは多かれ少なかれ美しい彼女に恋心を抱くようになっていました。マレアは彼らの話題に出てくる人物の1人となっていたのです。そして幼いキオたちも彼女に憧れる<男たち>なのでした。
3人の視線を感じたのか、マレアがキオたちを見つけました。「おはよう!みんなそんな所でどうしたの?」明るい笑顔で呼びかけるマレアの元へ3人は我先に駆け寄りました。「おはようマレア!僕たちマレアを手伝いに来たんだ!!」最初に叫んだのはルイルでした。「そうだよ、マレア大変でしょ?後は僕たちに任せてよ!」キオも負けじと叫んでいます。パティンは後ろで少しモジモジしているようでした。マレアは少し驚きながらこう言いました。「ありがとう!でもみんなお家の手伝いはどうしたの?」それに答えたのはキオです。「もう終わっちゃったよ。だからこっちに来たんだ。」「僕んちも畑が小さいからすぐ収穫すんじゃったよ。」ルイルも答えました。パティンも何か言いたげでしたが黙っていました。マレアは少し身をかがめ、彼らに笑顔で問いかけました。「もう終わったの、本当かなぁ?」マレアは1人1人の顔を交互に見つめました。そしてここでパティンがようやく口を開きました。「ぬ、抜け出してきたんじゃないよ…。」「ばか、パティン。」あわててキオが制しましたが、時すでに遅しです。マレアは空を見上げ、少し考えた後で3人に向かって、ゆっくり諭すように話出しました。「キオ、ルイル、パティン…手伝ってくれるのはすごく嬉しいんだけど、でも自分の家のお手伝いもした方がいいんじゃないのかな?」3人はうつむいてしまいました。どう言えばいいのかわからなくなってしまいました。そんな彼らをマレアは優しく見つめていました。「それで、お父さんやお母さんのお手伝いをした後でだったらまた来てもいいよ。ね、だから今は帰ろう?」もう帰るしかないようです。もと来た道を戻ろうとした時です、そこに近づく小さな影がありました。「こらー!あんたたちー!!」
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